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そこへ旅人(たびびと)が通(とお)りかかりました。
旅人 「よう、てえしょう(大将)、ヨモギ団子(だんご)ってえのがあるそうじゃねえか、名物(めいぶつ)のよ」
吾作(ごさく)はあわてて言(い)いました。
吾作 「名物(めいぶつ)?冗談(じょうだん)じゃありませんよ。瀬田(せた)で名物(めいぶつ)と言(い)やあ、うちの白(しろ)い団子(だんご)に決(き)まってますよ。甘(あま)じょう油(ゆ)をつけて食(た)べたら、もうやめられられない。ヨモギなんて臭(くさ)くて、食(た)べられやしない」
旅人 「そう言(い)うけど、ヨモギを食(く)うと、道中(どうちゅう)、やまいにならねえって評判(ひょうばん)だよ。無(ね)えんならいいよ。あばよ」
旅人(たびびと)は、いってしまいました。
吾作 「うーむ。また、ヨモギ団子(だんご)かー」
吾作(ごさく)は歯(は)ぎしりをして、くやしがりました。
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